特定技能外国人が辞める本当の理由|離職率のデータと定着対策の優先順位
特定技能外国人が辞める本当の理由|離職率のデータと定着対策の優先順位
「賃金を上げたのに、結局辞めてしまった」。定着の相談で最も多いのがこのパターンです。
離職の原因は賃金だけではありません。この記事では、公表データで離職の実態を確認したうえで、賃上げより先に着手すべき対策を優先順位をつけて整理します。
先に結論:着手順は「面談 → 指示の伝え方 → キャリア提示 → 賃金」
| 優先度 | 対策 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 定期面談の質を上げ、記録を残す | ほぼゼロ |
| 2 | 作業指示をやさしい日本語に統一 | 低い |
| 3 | 2号までのキャリアパスを提示 | 低い |
| 4 | 賃金テーブルの見直し | 高い |
費用が低い順に効果が出やすい、という点がこの表の要点です。
データで見る離職の実態
分野によって離職率は2倍以上違う
| 分野 | 自己都合離職率 |
|---|---|
| 宿泊 | 32.8% |
| 農業 | 20.1% |
| 外食業 | 19.6% |
| 飲食料品製造業 | 19.3% |
| 工業製品製造業 | 14.0% |
| 建設 | 12.1% |
| 介護 | 10.6% |
| 全分野平均 | 16.1% |
この16.1%という数字は、日本人大卒者の3年以内離職率(約33.8%)と比べると低い水準です。「特定技能はすぐ辞める」という印象は、データ上は必ずしも正しくありません。
辞めた後の行き先
| 離職後の状況 | 割合 |
|---|---|
| 帰国 | 31.4% |
| 特定技能内で転職 | 30.3% |
| 別の在留資格へ変更 | 15.1% |
注目すべきは、3割が同じ制度内で別の会社へ移っている点です。つまり日本で働き続ける意思はあり、貴社を選ばなかっただけ、という構図です。
辞めるタイミングは入社1年以内に集中
民間調査では、退職者の3人に2人が入社後1年以内に辞めているとされ、理由として給与への不満と職場の人間関係が挙げられています(日本経済新聞報道、民間調査)。
なぜ賃上げが最優先ではないのか
賃金は重要です。特定技能の平均月給は221,400円(令和7年、前年比+4.8%)で、技能実習の190,300円より約3万円高い水準にあります。ただし、賃上げには2つの制約があります。
一つ目は、日本人従業員との整合性です。特定技能外国人の報酬は日本人と同等以上である必要がある一方、外国人だけを引き上げると社内の不公平感が生まれます。
二つ目は、他社も上げているという点です。最低賃金は2026年度も引き上げられており、賃金だけで差をつけ続けるのは中小企業には難しい構造です。
だからこそ、費用がかからず他社が手を抜きやすい「面談」「指示の伝え方」「キャリア提示」で差がつきます。
優先度順・4つの対策
1. 定期面談の質を上げ、記録を残す
義務的支援の定期面談は3か月に1回以上です。形式的に実施するのではなく、仕事で困っていること、生活で困っていること、今後どうしたいかの3点を毎回聞き、記録に残してください。記録があれば、前回と比べた変化が分かります。支援機関に委託している場合は、面談記録の共有を求めてください。
2. 作業指示をやさしい日本語に統一する
N4合格と「現場の指示が通る」は別物です。曖昧な指示、暗黙の了解、二重否定は、日本語が母語でない人には伝わりません。「あれ持ってきて」を「3番の棚の青い箱を持ってきて」に変えるだけで、ミスと叱責が減ります。
3. 2号までのキャリアパスを提示する
特定技能2号は在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族帯同も可能になります。2026年3月末時点で12,420人と少数ですが、前期比で約2.6倍に増えています。「この会社で2号を目指せる」と示せるかどうかは、5年で帰るか、長く働くかの判断を左右します。
4. 賃金テーブルを見直す
上記3つを整えたうえで、同業他社の求人と自社の条件を比較してください。地域・分野ごとの相場は求人票から確認できます。
BIGLIGHTの現場から
BIGLIGHTは名古屋を拠点に、250名以上の特定技能人材を支援し、70社以上の企業と取引しています。転職相談を受けるとき、最初に聞く質問は「今の会社の何が一番つらいか」です。
返ってくる答えで多い順は、指示が分からず怒られる、相談できる人がいない、将来どうなるか分からない、給料が低い、の4つです。給料は4番目に出てくることが多く、最初に出てくることは多くありません。
もう一つ現場で感じるのは、辞める前に必ず兆候があるということです。遅刻が増える、面談で口数が減る、寮での交流が減る。この段階で気づければ、話を聞くだけで留まるケースがあります。逆に、退職届が出た後に条件を上げても、ほぼ戻りません。
人が抜けたときの補充については特定技能「国内転職者」採用ガイド、2027年以降の転籍制度は育成就労2027年4月スタートで解説しています。
定着対策チェックリスト
- 定期面談で「仕事・生活・将来」の3点を毎回聞いている
- 面談記録を残し、前回との変化を確認している
- 作業指示から曖昧な表現と暗黙の了解を減らした
- 現場責任者がやさしい日本語の使い方を理解している
- 2号までのキャリアパスを本人に説明した
- 日本語学習の機会(教材・時間)を提供している
- 遅刻・欠勤・口数の変化を記録して共有している
- 同業他社の求人と自社の条件を比較した
まとめ
特定技能の自己都合離職率は全分野平均16.1%で、日本人大卒者の3年以内離職率より低い水準です。ただし退職者の6割は入社1年以内に集中し、辞めた人の3割は同じ制度内で他社へ移っています。対策は費用が低い順、つまり面談、指示の伝え方、キャリア提示、賃金の順で着手するのが現実的です。
※統計は出入国在留管理庁公表資料および厚生労働省賃金構造基本統計調査(令和7年)に基づきます。離職タイミングは民間調査の報道によります。
定着支援の体制づくりについてのご相談を承っています。BIGLIGHT株式会社(登録支援機関 21登-006596/有料職業紹介 23-ユ-302414)。無料相談はお問い合わせフォーム、またはTEL 052-908-7944(平日9:00〜18:00)へ。
